人はそれをストーカーと呼ぶ 後編

「・・・・おい、黒羽丸はいるか。」
「はい、ここに。」

いつもは『烏』か『三羽烏』なのに、今日は私をご指名とは。
何か重要な用なのだろうか?

「何だ?こいつは?」

そう言って若頭が私に見せたのは、門外不出、我ら三兄弟の連絡帳代わりにと私が使っていた『若頭観察日記』。
トサカ丸もささ美も何故か自分なりの連絡ノートを作っているが、私はなかなかの出来だと思っている。

・・・・

なにぃいいいいいい!

何故リクオ様があれを?!


落ち着け、若が私を睨んでいる。落ち着くんだ。
そうだ、雪女が若頭に携帯を奪われて何かされた時に、雪女が使った言葉を言えばいいはずだ。
あれで若頭は自らを恥じて顔を赤くして、反省していたようだしな。よし 


「もう、エッチです、若。(声真似付き)」

あ、若が凍った。
そうか、あれは雪女の畏を発動させる為の言葉だったのだな。
そういえば、あの時も動きが止まっていた。

「おい、てめぇ。いったいどういうつもりで・・・」

あ、もう回復した。
私は烏天狗だからな。雪女の畏が上手く使えなくとも、当然か。
しかし、ほんの僅かの間でも相手を凍らせることができるのであれば、何かと応用の効く良い技となりそうだ。

「若頭。それは我々の仕事の為の物ですから、お返し願いませんか。」
「『日記』ってあるが?」
「ああ、それはジョークです。」
「はぁ?」

親父殿が俺に、もっと頭を柔軟に働かせる為に、ジョークを交えろと言われたのがこの名前にしたきっかけだ。
カモフラージュにもなる、実用的なジョークだと思うのだが・・・

「と、とにかく、間違った事が書いてあるぞ。」
「どこがですか?」

何か間違ったことが書いてあったのだろうか。
必要とあらば修正する必要があるな。

「俺とつららはまだ将来を誓い合っていねぇ。」
「・・・そうなのですか?」
「ああ、そうだ。」


さて、これは本当と見るべきか、嘘と見るべきか。

若頭がまだ未成年であることを考えれば、誓い合ったといっても有効とはみなされない。
となれば、雪女を狙う輩が焦って手を出す可能性がある。
やりかねない妖に心当たりもあるしな。
それを警戒して嘘を付いている可能性が高い、と見るべきだろう。

そもそも本当であれば、今までの若頭の行動に、不可解な点が多くなりすぎる。
・・・すこし当たりをつけてみるか。

「そうでしたか。私にはお二人は『つがい』のように見えたのですが、勘違いでしたか。」
「な・・・つ、つがい!?」

若頭の顔が真っ赤に染まっている。
ふむ、やはり私の推測で大体当たっているということだな。

「申し訳ありませんでした。今後は、日記の書き方に気を付けます。」
「お、おう。分かればいいんだ。」

よし、日記は回収したし、上手く誤魔化す事も出来た。
我ながらなかなかの出来だな。

おや?立ち去ろうと振り返ってみれば、いつの間にか雪女がいる。
頬を染めている所を見ると、少なくとも最後の所は聞いていたようだ。

「雪女。『名』を聞かれる日が、楽しみだな。」
「っ!!」

すれ違いざまに雪女にだけ聞こえるよう囁いたのだが、まったく、二人とも良く似た反応をしてくれる。
見なくとも解る。きっと顔を真っ赤にして、若頭と雪女は互いを意識している事だろう。


護衛項目が、一つ増えたな。

『雪女の貞操』

他の奴からはともかく、夜のリクオ様から守るのは骨が折れそうだ。

 

 


黒羽丸は何でも知っている、というお話(笑)。
リクオからは守らなくても良いんじゃないの?とは思いますが、頭の固い黒羽丸はにとっては、成人するまではダメ、となってしまうのです(^^)。

美雪様からリクエスト頂いた、11000hit記念文でした。
一応リクエスト通りになっている・・・はず(笑)。
リクつらのいちゃつきっぷりの表現が日記形式だけになってしまいましたが、ご満足いただけたでしょうか?

もう黒羽丸が物凄いギャグキャラになっちゃっているし、烏天狗にトホホな設定を付けちゃってるし、好き放題いじり回してしまいました。
いや、作っていて楽しかった~。
黒羽丸主観ですから、当然勘違いが色々と含まれています。
実際には何があったのか、色々と想像するのも面白いと思いますよ(^^)。

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