紅い坂の下で

浮世絵中学校へ向かう道の中、見事に紅く色付いた木々を何気なしに眺めながら、私は学校へと一人歩いている。
そうしていると、突然背後から聞き慣れた声がしてきた。

「おはようカナちゃん。」
「あれ?リクオくん?おはよう、今日って日直じゃなかった?」

リクオくんは今日、日直で早いはず。
だから一人で登校していたとも言えるのだけれど、考えてみればいつの間にか朝は一緒に登校しないのが当たり前になっていた。
その原因が日直で一緒じゃない日が多くなったせいで、自然とそうなった、というのは正直どうかと思う。

「いや~、それが寝坊しちゃって・・・。」
「へえ~~、珍しいね。」

照れ笑いする彼と、こうして朝話すのはけっこう久しぶりな気がする。
特に二学期になってからは、さらに減ったような。

「リクオ君!時間までにお勤めが終わらなくなっちゃいますよ!」

ああ、やっぱり居たのね。
あ互い気付かず・・・いや、後ろから来たあの子なら気付いていたかもしれないけど・・・通り過ぎてしまっていた及川さんが、振り返ってリクオくんに早く行こうと急かしている。

「あ、家長さんおはようございます。」
「おはよう及川さん。」
「ごめん、カナちゃん。また後でね。」

クラスが違うはずの(というか何処のクラスか未だに分からないんだけど)彼女と、どうしてリクオくんが一緒に日直をするのか、一度問いただしてみたい。
そうは思っても、二人を見ていると、何故かどうしても聞く事が出来ない。
前に一度、及川さんに聞いたら、リクオくんが割って入って話を逸らしてきた事がある、というのもあるけれど・・・

「アハハ・・がんばってね(^^;)」

今日も結局、当たり障りのない事を言って、二人を見送る。
何時からこんなに勇気が無くなったんだろ。

「ほら、急ぎますよ。」
「え?あ、うん、急ごうか。」

何手を繋いでんのよ

手を取りあって、中学校へと続く坂道を駆け上がっていく二人の姿に、私は茫然と立ち尽くしてしまった。

「あいつら、とうとうこんな所でまで・・・」
「うぁえっ!?ゆらちゃん!?」

いつの間にか私の隣に現れたゆらちゃんの声に、びくりと驚いてしまう。

「家長さん、おはよう。
 ・・・あんなん朝から見せられたら呆れんのも当然やけど、ほら、はよ行こう。」

私が即座に応えないのを、リクオくん達に呆れての事だと勘違いしている。
えーと、どちらかと言うと、あなたの現れ方にビックリした割合の方が高いんだけど・・・

「ご、ごめんゆらちゃん。さ、行こっか。」

あれ?こんな所でも、ってことは、別の場所でもあんな感じの事をしているって事かな。

「ねぇ、ゆらちゃん。こんな所でもって・・・。」
「え?ああ、ええと・・・。」

何故か慌てているゆらちゃんの姿を見ていて、ハッとなった。

そうか、草むしりの時のように、人気のない所であんな事やこんな事をしているのを、偶然ゆらちゃんが見かけたのね!

元々積極的だったけど、きっと人前では言えないような事をしていたから、ゆらちゃんも言っていいのかどうか悩んでいるに違いないわ!

「わかった、ゆらちゃん。」

がしりと手を握ると、ゆらちゃんは「はぇ?」と不思議そうな声を上げる。

「学校で変な事しないよう、ちゃんと私が見張っているから。」
「へ?なんでそうなるん・・・って、見張る?」

自然と溢れる笑みと共に双眼鏡を手に取ると、何故かゆらちゃんはドン引きしていた。


・・・あれ?

 

 

 

 


リクエスト文「学校で昼リクつら←カナで嫉妬する」でした。
時期は京都編の後、2学期の後半の紅葉の時期です。
カナちゃんが変な子になっています、ファンの方ゴメンなさい。

最初は嫉妬というよりは、物哀しい感じになっていたのですが、『このままでは私が面白くない。』と終わりの方を大幅に変更。
ストーカー技能の事を思い出して、その部分を強調して描いてみたのですが、満足のいくものとなりました。楽しんでいただけましたか?

いや、難しいと思っていたカナちゃんでしたが、なかなか楽しいスキルをお持ちで(^^)。
この作品はフリー配布文と致しましたので、宜しければどうぞお持ち帰りください。その際、一言頂ければ嬉しく思います(^^)。


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