旅立ちの前に

ゆらが修行の為に東京へ向かう、という事知った魔魅流は、鍛練の為と称して本家へとやって来た。
別に魔魅流が本家に来るのは、珍しい事ではない。
分家の所在地が近かったという事、そしてゆらと年齢が近いという事もあり、よく遊び・・・もとい鍛練に来ていたのだ。

ゆら「あ、魔魅流君。今日も研究に来たん?」
魔魅流「うん。ほら、ゆらちゃんの『人式一体』の技があったやろ。
    あれに、僕のオリジナル要素を入れたモンが、完成しそうなんや。」

魔魅流は、新しい技を開発する事ばかりに没頭していた。
もっとも、大抵は失敗か、あるいは大して役に立たないものばかり。
今は、ゆらから教えてもらった『人式一体』をベースにした術を編み出そうとしていた。

ゆら「へぇええええ、さすが魔魅流君!それ、自分にも使えるやろか?」
魔魅流「うーん、どうやろ。細かいコントロールが必要やしな・・・」
ゆら「う・・・それは無理。あかんか~。」
魔魅流「はは・・・ゆらは力任せやからなぁ。」

仲良くしている二人を、木陰からじっと見る影があった。
黒い衣装を纏ったその人物は、背中から『ゴゴゴゴゴ』と音が聞こえてきそうなほどの不審な気配を出している。

ゆら「・・・・お兄ちゃん。何しとるん?」

いいかげん無視できなくなったゆらが、その人影に嫌そうに声をかけた。

竜二「ふ・・・何、俺も魔魅流の新しい術の開発に関わっているからな。
   そのチェックに来ただけだ。」
ゆら「・・・ほんまに?」

嘘つけー、と言いたげな白い目で竜二をみるゆら。
だが意外な所から、竜二の言葉を肯定する言葉が出てきた。

魔魅流「あー、うん、残念ながら本当だよ、ゆらちゃん。」

どう考えてもそれだけでは無いと思うのだが、何か言えばその数倍の言葉が返ってくるのは目に見えている。
仕方なくゆらは、竜二を無視することにした。

竜二「で、今日は何の用だ、魔魅流。」
魔魅流「え?せやから術の研究の為に・・・」
竜二「嘘をつくな。今は式の選定の最中のはずだ。
   ここに来る必要などないだろ。」
ゆら「へ?そうなん?」

驚くゆらに、魔魅流はバツの悪そうな顔をする。

魔魅流「実は、ゆらが東京へ行くって聞いてな。」
ゆら「うん、それがどないしたん?」
魔魅流「ほら、東京って怖いとこって言うやろ?」

魔魅流が、少しだけ腰をかがめて、ゆらと視線の高さを同じにする。
そう、この時の魔魅流は、竜二とさほど身長に差がない。

ゆら「え・・・あ、せやな。妖怪どもがわんさか出るっちゅう所に行くでな。」

ゆらは魔魅流の様子にドキッとしながら答える。

魔魅流「ちゃうちゃう。そっちやないって。
    怖いンは人間の方。」
ゆら「はぁ?なんで?」
魔魅流「だから、東京に行く前にゆらちゃんをお・・うぇあ!!」
竜二「それ以上は発言禁止だ。何を考えている。」
ゆら「え?え?何?何なん?」

怪しげな雰囲気を出し始めた魔魅流の頭部を、竜二が鷲掴みにして締め上げている。

魔魅流「竜二・・・い、痛い!ホンマに痛いって!」
竜二「五月蠅い。お前ももうすぐ術が完成しそうだからって、同情して大人しく見ていてやったら、
    つけ上がり
やがって。」
ゆら「ちょ、兄ちゃん。魔魅流君本気で痛がっとるって!放したり!」

何やら魔魅流の頭部からミシミシと嫌な音が聞こえてきた。

竜二「お前には教育が必要らしいな。
   いや、今度調教してやるから覚悟しておけ。」
ゆら「ちょ、調教って何言うとるん!」

驚くゆらをそのままに、竜二は魔魅流の頭を握りながら、ずるずると屋敷の中へと引きずっていく。

竜二「くくく・・・楽しみだな。お前の術の完成。
   そんなに研究熱心だっていうんなら、すぐに完成させてやるよ。」
魔魅流「か、堪忍して!な!ほんの冗談やって!い、イタタタタタタタ!!」

魔魅流は悲痛な叫び声を残して、花開院家の館の奥へと消えていった・・・・

 

 

えーと、何がどうなってこんな変なSSになったのやら・・・
確か最初の設定というか、キーワードは

「魔魅流が式を体内に入れる日
 感情を無くすための儀式を受ける日
 彼は覚悟を決め、最後の別れのために、竜二とゆらの元を尋ねた」

じゃなかったっけ?!
なんだか竜二も魔魅流も壊れていますが、ねつ造ネタなんでご容赦ください。

ねつ造設定では
 身長
  魔魅流=竜二(下駄込み)>ゆら
  本誌のように魔魅流は長身ではありません。
  人式一体(魔魅流オリジナル)の作用で大きくなった。
 人式一体(魔魅流オリジナル)
   人式一体の全身版。八十流と同じ理由で、感情をなくす必要がある。
   式を体内に取り込むことにより、身体能力もUP。身長もUPw
 年齢
  竜二>>魔魅流>ゆらで、ゆらに近い。

となっております。
はぁー。シリアスって、難しい。そう簡単には書けませんね。

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