幼き日の出会い

「お~~い、総大将。『かふぇ』でもせんか。」

ある晴れた春の日、ぬら組に大幹部狒々様が訪れ、総大将に『かふぇ』をしようと言ってきた。

「なんじゃい、藪から棒に。・・・ん?その子は?」

狒々様のお伴には、狒々組幹部が一人と、そして少年が一人。
整った顔立ちをした少年は、ぺこりと総大将に頭を下げた。

「おお、お主のとこの息子か。ずいぶんと元気そうじゃな。」
「総大将の孫ほどじゃあないよ。」
「年は確か、リクオとあまり変わらんと聞いていたが・・・。」
「ああ、今日は挨拶がてら、こいつとリクオ様を顔合わせしておこうと思ったのじゃ。」

そう言う事ならと、総大将はお共にリクオが慣れている首無と雪女を連れていくことにし、繁華街の喫茶店へと向かった。

「ヒヒじいちゃんの子ども?ふーん、なんてなまえ?」
「猩影。あんたがリクオ?」
「うん。ぼくのこと知っているんだ。」
「ああ、親父から聞いたからな。年も近いんだってさ。」
「ふーん、でもせがたかいね。」
「いいだろ、ウチのとこはみんなそうなんだぜ。」
「いいなー。」
「なーに、あんたも背が高くなるって、きっと。」
「そうなるといいな!」

道中、猩影とリクオは年が近いという事もあってか直ぐに仲良くなり、時々一緒に悪戯をしてはお伴達、中でも雪女を困らせていた。

 


「あははー、こっちこっちー。」
「そっちは車が多いから危ないと・・・ほら、捕まえた!・・・うひゃあ!?」

リクオがわざと捕まった途端、後ろから忍び寄った猩影が雪女に『膝カックン』を炸裂させる。(注1)

「わ、わわわわ・・・・」

完全にバランスを崩した雪女は自分を支えきれず、そのまま猩影にもたれかかってしまう。

「うわっ、冷た!」
「きゃあ!」

猩影はとっさに体を支えてしまったものの、その冷たさに思わず雪女を突き落してしまった。
ゴンッ!と鈍い音が歩道に倒れた雪女からしてくる。

「い、痛~~~い・・・」
「あ、ゴ、ゴメン。」

さすがに悪い事をしたと思った猩影が、慌てて膝をつき雪女を起こそうとする。
が、雪女はギロリと猩影を睨み、猩影はゾクリと悪寒を感じて後ずさった。

「いい加減にしなさい!ゴメンで済むわけ無いでしょう!」

雪女が起き上がると同時にゴウッと吹雪が舞いそうになったところで、首無が雪女の頭を軽く叩いた。

「こらっ、雪女。子供相手にそこまで怒らなくていいだろ。」
「だって首無、この二人ときたら悪戯が過ぎるんですよ!」
「らしくていいじゃないか。」

首無の言い分も分かるのだが、雪女としては主に自分が標的にされている為もあって納得できない。

「もう!だったら首無がちゃんと捕まえておいてよ!」
「はいはい。」

とは言うものの、猩影は雪女に怪我をさせたのかもしれない事が気になって仕方がないし、リクオもまた同じような理由で悪戯する気が失せてしまっていたため、首無が何をするでもなく大人しくしていた。

「あの・・・雪女。さっきはゴメンなさい。」

喫茶店へと再び向かい始めてすぐに、猩影は雪女に近付くと、ぺこりと頭を下げた。

「別にもういいわよ。私も大人気なかったし。」

つららはそう言ってにっこりと笑うと、猩影の手を握った。

「はい、捕まえた。猩影くんだっけ?リクオ様とは気が合うようで良かったわ。」
「あ、いえ・・・。」
「これからもリクオ様の事よろしくね?」
「は、はい・・・。」

少しばかり顔を赤らめながら、猩影は雪女から目を逸らして頷く。
そんな猩影に雪女がクスリと笑ったところで、反対側の手を誰かが握ってきた。

「ゆきおんな、ぼくも手をつなぐ~。」
「はいはい、リクオ様。」

雪女はリクオにもにっこりと微笑むと、3人並んで歩いて総大将たちの後に続いて行った。

 

 

 

 

あれ?何書きたかったんだっけ・・・。
なんか親子みたいな話になってしまいました。
父:首無、母:雪女、子供:リクオ、遊びに行った先の母に憧れてしまう子供:猩影、みたいな感じで。
猩影とつららの出会いを書こうと思ったのですが、幼いリクオが出てきて、首無も出てきて、カップリング色も何が何だか分からないというか、つらら総受けってことですかね?
あ、ちなみにこの時期はリクオが「雪女」と呼んでいたので、本文中でも全て「雪女」と表記しましたが、もちろんつららのことです。

最初に考えたテロップ部分はほとんど消化されていないので、喫茶店に着いた後の話しも書きたいと思います。
まぁ、これだけで終わっても良いかなー、なんて思ってしまっていますので、いつ話が書けるかは分かりません。

注1:相手の膝の後ろを、自分の膝で突くことによって、相手の膝を「カクン」と崩させる、昔からある子供のイタズラ。相手が物を持っている時にやると、怪我の元になるので良い子はやらないように(^^)。

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