リクオ、ロリコン疑惑を持たれる

あくびをしながら、リクオは布団に座り込んだまま大人しくつららを待っていた。
考えてみればこの隙に脱走してもよさそうなものだが、そんな事よりも待ち人とのこれからのひと時の事に思いを馳せる方が、よほど楽しい。
やがてパタパタパタ・・・とつららの歩いてくる足音がして、リクオの部屋の前で止まる。

「それではリクオ様、失礼します。」
「おう、入れ。」

リクオの返事と同時に障子が開けられ、寝間着姿のつららが現れたのだが・・・

「な・・・つらら!?どうしてそんな格好なんだ!?」
「え?可愛くないですか?」

現れたつららはどう見ても小学校2~3年生ぐらいにしか見えない年頃で、確かに何時もよりさらに愛らしさが数段増してはいるが、それは子どもゆえのものであり、そのことがまさにリクオにとって問題なのだ。

「可愛い事は可愛いが、俺にそんな趣味はねえぞ!?」
「リクオ様もそろそろお年頃。私の年齢そのまま変化したら、目の毒・体の毒と言うものです。」

そう言いながら、つららは部屋に入り障子を閉める。
つららの言う事ももっともだが、多少なりともそういうのを期待していたリクオとしては、文句の一つも言いたくなるものだ。

「いや、だからってな・・・」
「まぁ、この姿で手を出されたら、流石に引きますけど・・・」
「出すか!」

リクオの反応に、クスクスとつららが笑う。
そんなつららを見て、リクオはまあいいか・・・とつららの手を取って一緒に布団に入ろうとした時、障子の方から小さな声が聞こえてきた。

「けがらわしい・・・」

リクオとつららが「え?」と障子の方を見ると、その障子に映っている影は、どうやらささ美のようだ。

「ちょ、ちょっと待った!」

慌ててリクオが障子を開けると、既にささ美は空中に浮揚しており、リクオを見下ろしている。

「まさか若がこのような趣味をお持ちだとは・・・兄上たちに知らせないと!」
「待て!違うんだ~~~!!」

リクオの叫びを無視し、ささ美は飛び立ちあっという間に姿を消し去ってしまった。

「おいおいおい、変な噂になっちまうぞ。」
「済みませんリクオ様、私がこんな姿になったばかりに・・・」

がくりと肩を落とすリクオに、つららがしゅんとなって謝る。

「・・・まぁもうこうなっちゃ仕方がねぇ。諦めてさっさと寝るか。」
「はい、そうしましょう。」

リクオは先ほどの事でよほど疲れたのか、布団に入ると同時に、つららが布団に入るよりも早く直ぐに眠ってしまった。
そんなリクオを見てつららはくすりと笑い、再び姿を変える。

「約束ですからね・・・」

そう言いうと、つららはリクオの布団に潜り込み、そのまま一緒に眠りに着いた。

 

チュン、チュン、チュン・・・

「ふわぁああ~~~あ。よく寝た。」

既に昼の姿に戻っていたリクオが目を覚まし、右腕を伸ばして大きなあくびをした。

「あれ?左手が動かない・・・・。」

ここで昨日の出来事を急に思い出したリクオはハッとして布団をめくり上げる。
そこには、大人の人間の姿をしたつららが、リクオの左腕をまくら代わりにスーッ、スーッと可愛い寝息を立てながら横になっていた。

「え?な、子供の姿だったんじゃ・・・」

リクオは慌てふためきながら強引に左手を引き抜いてしまい、その拍子で横向きになっていたつららの体が、ごろりと仰向けになる。

「う~~ん、リクオ様・・・」
「!?」

自分の名前が出た事に、リクオは心臓が飛び出しそうになる。

「つらら、おはよう・・・」

リクオはてっきりつららが起きたのだと思って声を掛けたのだが、どうやら寝言だったしく返事が寝息で返って来た。
寝言で自分の名を呼んだ、という事に気が付いたリクオの頬が赤く染まり、つららを凝視してしまう。

「いったいどんな夢を見てるのかな・・・」

リクオはじっとつららを見つめていたのだが、はだけかけた着物の胸襟へと自然と視線が移ってしまう。
そこからつららの胸元が呼吸に合わせて見え隠れし、リクオは顔を耳まで真っ赤にさせながら、ごくりと喉をならした。

「ん・・・・あ、おはようございます、リクオ様。」

流石に布団をめくられては目が覚めるというもので、ようやくつららが目を覚まし、自分を凝視するリクオに朝の挨拶を交わす。

「あ・・・うん、おはよう、つらら。」

リクオはそう言いながらも、目線はつららの胸元を凝視したままで・・・

「どうかしました?」

そんなリクオの様子に、つららはリクオの視線の先に自分の目をやると

「り、リクオ様!どこ見ているんですか!?」

慌てて胸襟を正して体を起こすと、そのまま『どろん』と雪女の姿に戻り立ち上がった。

「あ、もう終わりか・・・」

思わず口から出てしまったリクオの言葉に、つららは顔を真っ赤にさせて怒鳴り散らす。

「若の助平!!もう知りません!!」

つららが部屋を飛び出し、ようやくリクオはハッと我に返り、慌ててつららを追いかけた。

「待ってくれつらら!ゴメン!悪かったよ!」

と、そこにリクオの前に立ちはだかるように、黒羽丸が飛び降りてくる。
いつものような生真面目な顔をしているが、彼の事をよく知る者が見れば、不機嫌である事に気が付いただろう。

「若頭、お早うございます。」
「え?黒羽丸?ちょっと、退いてよ!」
「昨日の事はささ美から聞きました。若に限ってと思い聞き流してしまったのですが、まさか本当だったとは・・・。」

至極真面目な顔で、残念そうに話しかけてくる黒羽丸の言葉の内容に、リクオはさらに慌ててしまう。

「いや、違うって、それは誤解だから。」
「若、個人の趣味・嗜好にまで干渉するつもりはありませんが、これは流石に頂けないかと。」
「だから違うんだ~~~!!」


それからしばらくの間、『若は雪女に幼女の姿を取らせて楽しんだ』というとんでもない噂がぬら組を賑わせたという。

 


時折妙なギャグが入ってしまいましたが、けっこう甘いリクつらが出来たでしょうか?若はむっつりスケベが良く似合うと思います(笑)。
しかし、改めて見ると、前半は甘々でしたが、後半がギャグ色強くなっていますねぇ。
リクオにとっては悲惨な結末になってしまいましたが、私は非常に楽しめました。
前回といい黒羽丸が変な子になっていますが、私の所の黒羽丸はこういうキャラです(笑)。

つららの寝巻ですが、上手に使えば大きいサイズても子供が着る事が出来たような気がする、という理由で、子供の姿から大人の姿に化けた時に関するシーンは省いています。実際の所はどうなのですかね?
そういえばつららの年齢って何歳なのかなぁ・・・自称乙女なので、人間換算で高校生ぐらいでしょうか?

 

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