雪女の恩返し?~後編

「ひゃっ!?わひゃ!?」
「!!」

リクオは襖を開け中を見るなり絶句する。
目の前には、巨大な・・・そう、まさに巨大というべき、自分よりも背の高い巨大かき氷が『でーん』と待ち構えていた。

「そ、そんな、まさかつらら!?」

リクオは体全体を震わせながら、巨大かき氷へと近付く。

「ぼくがかき氷を頼み過ぎたから、こんなことに・・・」

震わせる手で巨大かき氷の器を触ると、それはヒンヤリとした、まるでつららのような冷たさをリクオは感じ、リクオはその場にへたり込んでしまった。

「何を言っているんですか?」
「わぁっ!」

巨大かき氷が喋った!?
とリクオはビックリして後ずさり、そのまま尻もちを着いてしまう。
パクパクと口を動かしていると、巨大かき氷の横からひょい、とかき氷を頬張っているつららが顔を出した。

「え?つらら?」
「大丈夫ですか?リクオ様。」

リクオは狐に包まれたような顔をしながら、巨大かき氷とつららの顔を何度も見比べる。

「本当に大丈夫ですか?」

心配な顔をしながら近付いてきたつららがリクオの手を取り、その手の冷たさに、ようやくリクオがハッと正気に返ると、全身から力が抜けたようにつららにもたれかかった。

「リクオ様!?」
「はぁ~~~~~~~。よかった~~~~~~。」

つららは訳が分からず首を傾げながらも、とりあえずリクオを安心させようとギュっと抱き返した。

「もう、張り紙を見なかったのですか?」
「うん。でもつららが心配で。」

その言葉に、つららはリクオから体を離して顔を正面に見据えると、首を傾げた。

「心配って、何がです?」
「その・・・僕が食べていたかき氷って、まさかつららの体を削ったりしてないよね?」
「そそそそ、そんな訳無いでしょう!?どうしてそうなるんですか!?」

あまりにも突拍子なリクオの物言いに、つららは慌てて首を振る。

「いやだってほら、最近つららが痩せてきたし・・・」
「それは猛暑が続いたからですよ。
 私は雪女ですからね。さすがに堪えて、痩せてしまったのです。」

しかたがありませんよー、と事もなげに答えるつららに、リクオは心配そうにつららの頬に手を当て顔を覗き見る。

「大丈夫なの?」
「はい、なんとか。皆にも氷やドライアイスを用意してもらっていますし。」

そういえば、最近は奴良組の中でも人間に化けることのできる者たちが、よく外でアイスを買って来ているのを見た覚えがある。
皆も暑さにやられての事だと思っていたが、まさかそんな意味があったとは。

なのに、自分は何をやっていたというのだ。
つららにかき氷を作らせ疲れさせるだけで、何もしていないではないか。
主だというのになんと不甲斐無い事だと、リクオは気分がどんどん落ち込んでいった。

「あの、リクオ様、大丈夫ですよ。さっきも涼を取る為に、かき氷を食べていましたから。」

それを自分を心配しての事だと勘違いしたつららが、大丈夫だとガッツポーズを取り安心させようとする。

「あ、そういえばさっきの・・・」

リクオはそう呟くと、つららの部屋の中にある巨大かき氷を見上げた。

「これ、もしかして・・・つららが食べるつもりだったの?」

つららの体どころか、青田坊よりも大きいかもしれないこの巨大かき氷を、つららは一人で食べようとしていたというのか。
呆気にとられ口をあんぐりと開けたリクオが、つららの方を見ながら巨大かき氷を指差す。

「その・・最初は普通の大きさのかき氷一皿だけだったんですよ?でもそれだけだと足りなくなって・・・」

羞恥心に頬をほんのりと赤く染め、つららは片袖で口元を隠し俯く。
そういうレベルの問題では無いような・・・とリクオは冷や汗を流しつつ、ふと思った事を口にした。

「あ、それじゃあかき氷が出来るのが遅くなったのって・・・」
「すみません、食べるのに時間がかかるようになってしまって・・・」

いやいや、これより一回り小さいとしても、前回頼んだ時だってそう多くの時間はかかっていなかったはずだ。
いったいどんなスピードで食べれば、これほどの量を短時間で食いつくす事が出来るというのだろうか。
それ以前に、つららのどこにあの量が収まるというのか。

「ねぇ、つららって・・・」
「はい?」
「もしかして、見た目よりずっと重い?」
「!!」

情報通の烏達さえ知らないほど、誰にも極秘にしているし、あれだけの量を食べても見た目が変わらないんだから、十分あり得る話だと、リクオは思った事をうっかりそのまま口に出してしまった。

ゴゴゴゴゴゴ・・・

「はっ!いや!つらら!別にそういうつもりで行った訳じゃ!!」

強烈な冷気を感じ、自分が何を言ってしまったのかをようやく理解したリクオが、ほとばしるほどの畏を放っているつららを慌てて抱きしめ、なんとか宥めようとする。
だが、パキパキパキ・・・と抱きしめた場所から凍りつき始める自分の服を見て、リクオは今夜は自分の部屋に帰れないな、と覚悟を決めた。

「あー、ほら、そういえば前に抱き上げた時、別に重いなんて感じなかった訳だし・・・ね?」
「乙女にそんな事言うもんじゃありませ~~~~ん!!」

その夜、リクオは氷の彫像としてつららの部屋で一晩過ごしたとか、過ごしてないとか。

 

 

 

どこでどう発想してこういうネタを思いついたのか、まぁ無茶苦茶なストーリーですね。
自分で作っておきながら、そう思います。
もうリクオがなんというか、アホな子になってしまっていますし。
ギャグ漫画のノリで書いているので、色々と変な所があるとは思いますが、笑い飛ばしてやって下さい。

あ、でも時々真面目になったりもしていますよね。
調子が変わるのは、大抵途中で筆が止まってしまって、違う日に続きを書いた時に起こります。


かき氷は食べると大した量ではありませんが、青田坊並みの巨大かき氷となると、実質どれぐらいの量になるんでしょうかね?
つららなら猛スピードで食べても、頭が痛くなる事はまず無いでしょうけど。やっぱり量はね~。
皆さんは、どれぐらいの大きさまでなら、かき氷食べれますか?(笑)

 


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