あなたの誕生花 ~七草

今日は一月七日。
正月の喧騒も堅苦しい貸元達との挨拶合戦もようやく落ち着き、リクオは目の前に並べられた七草粥膳を、ほっと一息つきながら箸を進めていた。

「つらら、お代り。」
「はい、リクオ様。」

差し出された茶碗を、ミトンを履いたつららが器用に掴み、新たに七草粥を入れる。
その流れるような手つきは、『せめて粥ぐらいは温かく召し上がっていただきたい』とつららが密かに特訓していた成果が見事に現れていた。
ただ、リクオの方は『何もそこまでしなくても。』とつららの手を冷や汗を掻いて見ていたのだが。

「冷たくても美味しいのに・・・」
「何か言いましたか?若?」
「い、いや何も!」

ボソリと呟いた言葉につららが反応した事に、リクオは顔を赤くして慌てて頭を振った。

「??」

それ以上追及される事は無かったが、なんとなく話し辛くなってしまい、つららも食事を再開したという事もあって、しばらく妙な沈黙が流れる。

「・・・えーと、ねぇつらら。」
「またお代りですか?いくらお粥とはいっても、あまり食べ過ぎない方がいいですよ。」

沈黙に耐えられなくなってリクオが話しかけてきたのを、つららは『またお代りしようとしている』と勘違いして諌めてきた。

「違うって。ほら、もうすぐつららの誕生日だよね。」
「はい。それが何か?」

何故今そんな話をするのだろう、とつららは不思議そうに顔を傾け相槌を打つ。
リクオの方はというと、とにかく話をしたくて咄嗟に話題を振ったものの、どう続けようかと頭をフル回転させていた。

「んーと、今回はね、つららと一緒にプレゼントを買いに行こうと思ってさ。」
「そ、そんな、貰えるだけでも畏れ多いのに、一緒に買いに行くなんてとんでもありません!」

リクオの言葉につららは大慌てで否定はしているものの、その顔は赤く染まり、明らかに嬉しそうな表情をしている。
その顔に満足したリクオが、ピシッと指を突き立て、有無を言わせぬ口調でつららに言い放った。

「僕がそうしたいからいいの。で、11日開けといてくれる?」
「は、はい!もちろん!」
「ん、良かった。」

嬉しそうにつららが答え、お互いニコニコと見つめ合っていると

「けっ、やってられるか。」

と誰かが部屋を出ていった。
その声に二人はハッなって、慌てて周りを見回す。
だが二人の予想に反して、食事を共にしていた奴良組の面々は何時も通りの騒がしい食事を行っているだけで、特に二人に注目している風でもなかった。
いや、側近達だけは微笑ましい顔でリクオ達を見ていたのだが。

「はは、学校じゃないんだから、気にする事も無かったね。」
「え、ええ、そうですね。」

『学校じゃなくても困るんだけどなー』と河童が少し呆れた顔でリクオ達を見ていたのだが、その視線に気付く事なく、リクオ達は食事を終えると自分の部屋へと戻っていった。

 

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