驚いた事に、松の木の下には、にこやかに微笑まれる若頭のお姿が。
・・・嫌な予感がする。
まさか、本当に若頭が塗りつぶしたとでもいうのだろうか。
「黒羽丸。その日記見せて。」
にっこりと笑いながら手を差し出されるその姿からは、何故か『畏』を感じる。
断わろうとしたのに、有無を言わせぬその雰囲気に、私は頷く事しか出来なかった。
「ありがとう、黒羽丸。」
ページをめくり読み続ける若頭の姿に、額から冷や汗が流れ落ちるのを感じる。
大丈夫だ。
前回と違い、それほど問題のある事は書いていない。
いや、正確には書かれていた所が塗りつぶされていた訳だが・・・
「ねぇ、この塗りつぶしてある所って・・・何が書いてあったの?」
来た!!
・・・ん?知らないということか?
いや、それとも知った上で、私の口から言わせようとしているのだろうか。
落ち着け。
都合良く消されていたのだ、どうとでも誤魔化せるというものだ。
「はい、9月2日の方ですが、私も制服を着て潜入する、という案があったのですが、結局できなかった事を思い出して書いていたのです。」
「へ?そんな事しようとしていたの?!」
うむ、すらりと言えた。日記に書いたことではないが、まったくの嘘を言っている訳ではないからな。
「ふ~ん。じゃあこっちは?」
もう一つの方か。これは別に隠しておく事でも無いと思うのだが。
「はい、そこには(ピ~~~~~)と書いてありました。」
「は?」
「ええ、ですから雪女に対しして(ピ~~~~~)と。」
若頭が真っ赤になっておられる。
ふむ、考えてみれば、人間としてはまだ子どもであり、思春期に入ったばかりなのだ。
この表現は、いささかストレートすぎたのかもしれんな。
「そ、そこは消したままでいいよ。」
「はあ・・・」
記録は正確に取っておきたいのだが、そう言われては仕方が無い。
ガラリ
おや?部屋には雪女がいたのか。
また二人で仲睦まじく過ごされていたということか。しかも私の目を盗んで。
「く、黒羽丸!あなたリクオ様に何て事吹き込んでいるの!」
「勘違いも甚だしい。私は見たままの事を書いただけだ。」
私の言葉に、二人は同時に顔から火を吹いた。
む、雪女が切れかかっている。
理由は分からぬが、ここはさっさと退散したほうがよかろう。
やれやれ、雪女の過保護ぶりには困ったものだ。
「兄貴・・・せっかく隠してやったのに、なんで正直に言うかな。」 若頭の部屋の前で繰り広げられている喧騒を見ながら、トサカ丸は頬杖をついて溜息をついていた。 「まぁ、一つ目は流石に誤魔化したようだから、良しとすっか。 そう言って懐から取り出した写真には、毛倡妓に見つかって慌てふためく、リクオの制服を着たつららの姿が映っていた。 なお、(ピ~~~~~)の内容は、皆さまのご想像にお任せ致します(笑)。 これもフリー文としますので、もし宜しければ、ご自由にお持ち帰りください。
オマケ
それに、こいつを使わなくてすんで良かったぜ。」
3万Hit記念文リクエスト「黒羽丸日記」でした。
なんとか出来上がりましたが、如何でしたでしょうか?
話の展開が以前作った「黒羽丸日記」とよく似てしまった所が、少し満足できませんでしたが、なんとか出来上がってホッとしました。
お持ち帰りの際、メッセージより一言頂けると嬉しく思います。