その日の帰り道、リクオの腕に自分の腕を絡ませて歩いている氷麗は、まるで先ほどの事が無かったのかのように上機嫌だった。
「もう、氷麗。いくら腹が立ったからって、あんなことしちゃ駄目だよ。」
「ちょっと脅しただけですよ~。『呪いの吹雪』も使っていないし、正体だってばらしていませんよ?」
「それはそうだけどさ・・・。」
もし割居先輩が氷麗の要求に応じなければ、その場で殺していたかもしれない。
そう考えると、リクオは背筋にゾクリと悪寒が走る。
「氷麗にはそんな事をして欲しくないんだけどな~。」
「脅す事ですか?」
「うーん、まぁ、あれって『畏れ』みたいなものじゃないの?」
確かにそうかも、と氷麗は考え込む。
雪女の『畏れ』には、ある種の『契約』を結ぶものがある。
破ればそれを察知し、予め決められた呪いが発動する。
普通は相手を殺すもので、その呪いを解くためには、自らがその呪いを受ける、つまり己の死を選択するしかない。
実はまだつららには使い方が良く解っていなかったのだが、もしかしたら無意識のうちに使っていたのかもしれない。
「そうかもしれませんけど、でも、あれって使うには何か条件があったような・・・。」
「条件って?」
「さあ?私にもよく解りません。」
氷麗の答えに、リクオは苦笑いするしかない。
まだ年若い妖であるつららでは、自分の畏れを完全に自分のものとしていなくとも不思議はないのかもしれない。
自分は厳しい修行によって様々な力を得た。
氷麗もまた、修行すればもっと色々な力を使いこなせるようになるのかな、とも思う。
まぁ、それであまり自信を付け過ぎられても困るのだが。
「今回はまぁいいか。結局最後に井伊先輩が駆け付けてくれて、上手く解決してくれたしね。」
リクオの言葉に、つららは目を丸くしてキョトンとしてしまう。 「でも力を使わないとなると、また襲われた時、どうすればいいんですか?」 拗ねた顔で氷麗が聞き返す。 「その時は、僕がつららを守るから。」 真剣な顔で氷麗を見つめるリクオの腕に、ぐっと力がこもる。 「でも、いつ襲われるか分かりませんよ?」 リクオの言葉の一つ一つに、つららは自分の鼓動がどんどん速くなっているのを感じる。 「じゃあ、ずっと私から目を放さないで下さいね。」 自分は本当に幸せ者だ、とつららはリクオの腕をギュッと強く抱きしめた。 二人はそのまま、奴良邸までずっと寄り添っていたという。 この手の話は、おそらく幾つものサイトで書かれていると思うので、被っていたら本当に申し訳ありません。きっとあると思うので、今のうちに土下座しておきます。申し訳ございませんでした。 さて、この話ですが、本当は本文に無いシーンを書きたくなって妄想が膨らんでいったものです。 まぁ、そのうち拍手御礼文としてそのシーンを描きたいと思います。 この作品はフリー文です。宜しければ、ご自由にお持ち帰りください。その際、一言お知らせ頂ければありがたいです。
あの後、リクオが走り去った事に気がついた井伊先輩が、部室から大きな音がした為に駆けつけてきたのだ。
彼が割居先輩を恫喝すると、おそらく氷麗に怯えていた事もあって割名先輩は完全に言いなりになってしまい、結局リクオも氷麗も退部せずに済んだのだった。
「でも氷麗、雪女の力を使うのは極力避けなきゃ駄目だよ。
特に正体がばれるような使い方は絶対に駄目だからね。」
確かにリクオの言った事は以前から言われている事なのだが、今日事件があったばかりだ。
どうしても、自分はリクオにとってそれほど大事では無いということなのか、と考えてしまう。
その問いに、リクオは即座に答えた。
氷麗は嬉しくなって、リクオの肩に自分の頭をのせ寄りかかった。
「いつもつららの側にいて、ずっと見ているよ。」
「ああ、どんな時でも、ずっとつららから目を放さないよ。」
3万Hit記念リクエスト「未来リクつら」でした。いかがでしたでしょうか?
やはり未来文となると、色々と解説が必要になってしまって、その辺をくどくないように文に入れるのが、とても難していですね。
ところが、プロット段階ではあったはずのそのシーンが、完成してみると影も形も無いというマジック(笑)。
あれれ?