きみの誕生石 その2

その日の帰り道、清十字団の活動も終えカナとも別れた後、氷麗が自分の携帯を取り出して、リクオに問い詰めていた。

「リクオ様、携帯のストラップを見せて下さい。」
「ん?ああ、いいよ。」

ニコニコと笑いながら、リクオは自分の携帯を取り出す。
それには、つららのストラップと同じデザインの、だが色合いが異なるリボンのアクセサリーがぶら下がっていた。
異なる点は、リボンの色が表が赤で裏が青というところと、結び目の宝石がオレンジがかったピンクの『パパラチア』と呼ばれるサファイアで、リボンの端の小さな宝石が赤いガーネットだという所だ。

「ここここ、これは?」
「もちろんストラップだよ。」
「そ、そういうことでは無くて!」
「うん、つららとお揃いのストラップ。良く出来ているだろ?」

予想通りとはいえリクオの『お揃い』という言葉に、氷麗の頬があっという間に真っ赤に染まる。

「ほら、この結び目の宝石はサファイアで、ボクの誕生石なんだ。」

お互い自分の誕生石を付けたストラップなんだよー、とリクオは事もなげに言うのだが、氷麗は口をパクパクと動かし自分の物と見比べ続けていた。
2つのストラップは完全にデザインが同じで、意外と遠目でもよく目立つ。
意匠も凝っている為、そうそう同じものなど無いだろうという事は容易に想像がつくし、誰がどう見ても色違いのお揃いだ。

「わ、私・・・う、嬉して・・・嬉しくてこれ、皆に見えるように持っていたんですよ?」
「うん、知っている。」

つららならきっとそうするだろう、というリクオの思惑通り、つららは屋敷でも学校でも誰彼かまわず見せびらかすように、携帯のストラップ部分がポケットの外に出るようにして持ち歩いていた。
そして屋敷の妖が質問してくればリクオから貰った事を自慢し、学校で聞かれれば貰い物だと、『誰から』かはさすがに黙っていたが、嬉しそうに見せていた。

そういえば、青田坊が自分にもストラップを、と泣きながら頼んできたっけ、とリクオは思い出し笑いをしてしまう。

「ま、さまかリクオ様も・・・」
「うん、ボクもつららと同じようなやり方で見せびらかしていたよ?」

ここ数日周囲の目線が少し変わったような気がしていたが、決して気のせいでは無かったという事に、氷麗の顔からボッと湯けむりが上がった。

「なななななな、なんでそんな事を。」
「うーん、なんとなく?」

しれっと答えるリクオに、氷麗は拳を握りしめフルフルと震えだした。

ストラップを貰った時は、天にも昇るほど嬉しかったのに。
お揃いのストラップだと知った時は、物凄く恥ずかしく、畏れ多く感じたけれど、同時に嬉しさも感じていたのに。
それがただ『なんとなく』という理由だけでやった事だというのか。

ではどんな答えを期待していたのかと聞かれれば、きっとつららは言葉を詰まらせてしまうであろうが、そんな事は今のつららにとっては関係ない。

「な、なんとなくって・・・い、イタズラにもほどがあります!リクオ様!」

そう氷麗は叫ぶと、耳まで真っ赤になった顔を隠すように手で覆いながら、屋敷の方へと駆けだしていった。

それを茫然とした顔で見送っていたリクオだったが、やがてボソリとだれとなく呟いた。

「イタズラじゃないんだけどなぁ・・・。」

リボンのアクセサリーの意味は『愛情』に『約束』、『人との結びつき』。
そしてもう一つ・・・

きっと意味を知っていたら、見せ回る事も無かっただろう。
携帯に付けるどころか、受け取るのを畏れ多いと断わっていたかもしれない。

だが、既に皆の前で自分から貰ったものだと宣言してしまったのだ。
もう外す事など出来まい。

「ああ、でも毛倡妓は知っていて黙ってくれてたみたいだな。」

今度、毛倡妓にケーキか何か、御礼をしようか。とリクオは決めると、軽快な足取りで奴良邸へと歩いて行った。
そこで自分の下僕がどのような顔で待っているのかと、どういう口説き文句で宥めようかと、想像を膨らませ楽しみながら。

 

 

 

 

 

 

後書き

つらら誕生日記念文を書こうとして出来上がった作品です。ちょこっと改訂しました。
策士、リクオ様大活躍でした(^^)。
奴良組はもちろん、学校でも『氷麗は自分のモノ』宣言を本人に気付かれる事無く行っています。
・・・ところで誕生日は何処?(笑)

いつもの事とはいえ、どうしてこう本来の目的とは関係のない話になってしまうのか、自分でも困ってしまいます。
まぁ、つららの誕生日はリクオの誕生日記念で書いちゃったし、これでいいですよね?

アクセサリーは、宝石は誕生石から細かな種類と色を調べて、アクセサリーの意味もネットで調べてリボンに決定しました。
形状は本当は実物を参考にしたかったのですが、『こういうのあったら良いかな~』とすぐに思い付いてしまったので、調べずにそのまま思い付いたものを描写してみました。
実際に形にすると、色合いのバランスがどうなるか不安なのですが、まぁその辺は気にしない事にしています(^^)。

ちなみに、男にはてきとーに対処する事で定評のある(笑)リクオなので、青には烏天狗に頼んで作ってもらった『畏』ストラップを渡していることになっています。

この記念文もフリー文としました。もし宜しければ、ご自由にお持ち帰りください。その際一言頂けると、大変嬉しく思います。

その1 戻る