「黒髪ねぇ・・・そうだ、牛鬼も黒髪だよね。」
「はぁ!牛鬼様だと!?」
「ほら、つららと同じで艶のある真っ直ぐな黒髪だし。
同じおじいちゃんの時代からの幹部だしね。」
「牛鬼様が雪ん子の・・・・」
この時、牛頭丸の頭の中には、妙な構図が浮かんでいた。
『オレと雪ん子が結婚する→牛鬼様との結束が益々強くなる→牛鬼組安泰』
「おお、それいいじゃねぇか!」
「違うだろ。」
げしっといつの間にか夜の姿になったリクオが、ガッツポーズを取る牛頭丸を蹴り飛ばした。
「なんだよてめぇ!」
「いいか、牛鬼は俺を導いてくれる役割を担ってくれていた。つまり親父の代わりだ。
つまりこういう事になるに決まってんだろ!」
『俺とつららが結婚する→父親代わりから義父に→俺が色々大満足』
「んだとぉ!てめぇが牛鬼様の婿だなんて、そんなの認められる訳ねぇだろ!
っていうか、そこは『奴良組安泰』だろうが!」
「いいんだよ!それはオマケで付いて来るから!」
お互い自分の妄想に相手が的確に突っ込んでいる事には触れもせず、ぎゃあぎゃあ二人は喚きだした。
その騒ぎに、さすがに奴良組の者達も何事かと、遠目に二人を取巻いて様子を伺いだす。
なんとも奇妙な組み合わせだと、首を傾げる者達の中には、当然側近達の姿もあった。
「ハッ!・・・・ちょっと待て、牛鬼組は女装して惑わす妖怪もいたよな。」
「ああ、馬頭丸が得意だぜ。あいつは嫌がんだけどな。」
「そういやつららの男の噂を聞いた事が無い。いやあっても困るが。
ま、まさかつららは・・・男の娘!?」
「馬鹿かお前は!いやちょっとまてよ。そういや馬頭丸だって見た目だけじゃ・・・」
「二人とも何楽しそうに話しているんですか~?」
突然間近から放たれた鈴の音のような声に、リクオと牛頭丸の体がビクリと反応する。
その声には、明らかに普段とは違った音色が入っていた。
「つ、つらら。何時からそこに・・・」
「げっ、雪ん子。」
二人が恐る恐る声のした方に振り返ってみれば、そこにはまさに『氷の微笑み』という言葉が良く似合う笑みを顔に張り付かせたつららが立っていた。
「仲良く何を話されているのかと思っていれば・・・」
「まて、つらら、誤解だ。」
「言っとくが、こいつが言ったんだからな。オレじゃねぇぞ。」
「あ、てめぇ同意していただろうが!」
「うるせぇ!オレまで巻き込むんじゃねぇぞ!」
なんとも情けない二人の言い合いに、遠巻きに眺めていた妖怪達の間から、昔からリクオ様は雪女に弱いからなぁ・・・と溜息の声が洩れる。
そして主がこれ以上恥を晒す姿を見ないよう、次々とその場を去っていった。
「二人とも同じです!私はれっきとした女ですよ!何考えているんですか!」
いつもなら、もはや正座して謝るしかないという状況だ。
だがリクオはつい、ポロリと思った事を言ってしまった。
「じゃあ今度証拠を見せて・・・はっ!」
「ばっ・・・お前何考えて・・・」
ゴゴゴゴゴゴ・・・と巨大な畏れを身に纏ったつららが、目をギラリと輝かせながらリクオ達を睨みつける。
「いいかげんにしなさい~~~~!!」
end とりあえず申し訳ありません。夜のリクオが残念な子になってしまいました。 以前、記念文でつららの父親ネタを書いたのですが、もちろんそれとはまったく関係の無い話です。 ちなみに、つららに男の噂が無いと思っているのはリクオだけです。
翌日、リクオは珍しく学校を休んだという。
なんだかリクオと牛頭丸が小学生の子どもに見えます(笑)。
最初は『父親は誰だ!?』でもっと引っ張るつもりだったのですが、いいネタが浮かぶ前に牛鬼様のネタを思い付いてしまった為、もうそれしか頭に無くなってしまいましてねぇ。
設定がそもそも違ってますから。
他の連中にとってつららの男の噂というのは、リクオの事なのですから(^^)。