色に染まる ~3

「今帰ったぜ、つらら。」
「お帰りなさいませ。見回りどうでしたか?」

大蛇に乗ったリクオがひらりと奴良邸の庭に舞い降りると、てててとつららが駆け寄ってゆく。
リクオが若頭としての自覚を強く持って以来、その光景は夜に時折見られるようになっていた。

「ああ、別に何も無かったぜ。」
「それは良かったです。どうもお疲れさまでした。」

リクオは嬉しそうに笑うつららを見て微笑むと、懐から何かを取り出しそっとつららの髪にそれを挿した。

「リクオ様?」
「ん、途中で綺麗な花を見かけたんでね。似合うと思って持って来たんだが・・・うん、いいじゃねぇか。」

自分が何をされたか気付いたつららの顔が、ボッと真っ赤に燃えあがる。
そんなつららの顔をリクオはにやにやしながらじっと見つめると、そっと自分の顔を近付けていった。

「り、リクオ様!?」

まさかこのまま!?とつららは思わずギュッと目を瞑ったのだが、予想していた感触は何時まで経ってもやってこない。

「くくく・・・それ、やるよ。今夜はもう遅いし、早く寝ないといけねぇしな。」
「へ?」

耳元からリクオの笑い声が聞こえてきたかと思うと、少し離れた場所からさらに声が聞こえた事につららは目を開け振り返ってみれば・・・既に屋敷へと戻ろうとしているリクオの後ろ姿があった。
顔だけ振り返ったリクオの顔は、にやにやと笑っている。

「い、いたずらですか!?も、もう冗談が過ぎますよ!」
「はは、そいつは済まなかったな。じゃあおやすみ、つらら。」

スタスタと立ち去って行くリクオの姿をじっと見ながら、つららは自分の髪に挿された花をそっと手に取り胸元へと持っていった。

「これは菖蒲(あやめ)・・・。」

花言葉を思い出したつららは、再び顔を真っ赤に染めた。

「ま、まさかね。リクオ様が花言葉を知っているはず無いし・・・だいいちそんなわけが・・・」

それからしばらくの間、つららは顔を真っ赤にしたままその場に佇んでいた。

 


「あ~~、思ったより恥ずかしいもんだな。しかし、もったいない事したかもしれねぇ・・・。」

あのまま迫れば、吹雪を喰らう事無く成功していた可能性の方が高かったのではないだろうか。
今となってみると、ついついそんな女々しい事を考えてしまう。
つららの赤く染まる顔を見た途端、なぜかいつもの余裕がなくなってしまった結果がこの様だ。

「まぁ、悪い感じじゃなかったしな。さぁ~~~て、次は何してやろうか。」

そう独り言すると、リクオは菖蒲を髪に飾ったつららの顔と、その菖蒲の花言葉を思い出しながら自室へと戻っていった。

 

end

 

6万Hitキリ番、あやめ様からのリクエスト『子リクつら』でした。
あまり子リクつらとは言えない内容でしたが、お楽しみいただけたでしょうか?
当初はそのつもりはなかったのですが、気が付けばあやめ様のHNを大いに活用させて頂きました(笑)。
基本的な部分を考えた後、おお、丁度今の季節の花じゃないですか、しかもこれは使える!という感じで(^^)。
あやめ様のみお持ち帰り可です。宜しければどうぞ~。

本誌では2代目がけっこう花言葉を知っていた模様なので、その辺もネタにしたいなと思いまして。
つららが花言葉を知るきっかけは2代目で、リクオが原因だったというのもいいかな~と。
題名の「色に染まる」というのはもちろん「つららがリクオ色に染まる」ということで(^^)。
まぁ、2代目にせよ子リクオにせよ、つららに対する態度があんまりですけどね(笑)。

話としては、花しりとり第二弾『花遊び』よりは前の出来事となります。


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