それからおおよそ1時間後・・・
「んぁ~~~、つらら。らから俺はおまぇのすらたあみねぇとなぁ~、もう、しんまいれしんはいれ・・・解るかぁ?」
「はいはい、リクオ様。ですから私は何時もリクオ様のお側にお仕えしておりますとも。」
「ちがぁ~~~う!そういう、意味ぃやねぇんらってよ。らいあいあぁ、おめぇは・・・」
つららはハァ、とリクオから見えないように口元を隠しながら溜息を付いた。
なぜこのようになったのだろうかと。
リクオ様に合わせて飲んでいたつもりだったが、良く考えてみれば何時もよりペースが速かったような気もする。
久しぶりに存分にお酒が飲めると、それもリクオ様と飲めるのだと嬉しくなって、羽目を外してしまったのかもしれない。
それにしても、まさかリクオ様がこれほど酒癖が悪いとは・・・
「おひ、ひいへんおかぁ、つらら。」
「は、はいっ、もちろんです。」
「んなあ今いっこう、い~いろよ~、んん?」
「きゃあ!リクオ様!」
そう言ってリクオはつららの肩に腕を回し、もたれかかってきた。
そしてその回した腕の先が、つららの胸をしっかりと掴んでいる。
「ん?おお、すまねぇ、悪いはねぇンらお?ほら、悪りぃ奴なぁ、おめぇあ。」
ペチッとリクオは自分の手を叩く。
まるで悪いのはこの手だ。俺じゃない。といでも言うかのように。
「はぁ~~~~、相当酔っていますね。もうお休みになられてはどうですか?」
「な~にいんらよ、ほれ、つららの告あくらぁさいらろ?」
「告白って何ですか?」
「ほ~ら、さっき言うってぇ言ったンねぇか。ほ~れおれ、言えよぉ。」
つららにはもちろん告白するなどと言った覚えは無い。
もしかして、先ほどの『今言った事、言ってみろ』の事だろうか?とつららは思う。
ここまで酔った姿を見たのは初めてだが、まさかこんな情けない姿を見る羽目になるなんて・・・
「ん~~~、らまんる悪いおなぁ、オシオキぃ、いるお~~。」
「へ?ちょ、ちょっとリクオ様、何を!?」
うっかり黙って考え込んでいた隙に、あろうことかリクオの手が着物の裾をたくしあげ始めていた。
慌てて前かがみになって抵抗するつららに、リクオは顎を器用に使ってマフラーを緩ませると、さらけ出されたうなじにふぅ~~、と息を吹きかける。
「ひぁあ!!」
「ほれほぉえ、こんろはこっちあ留守らおぅ。」
「きゃあ!!」
びくりと反応して背をのけ反らせ、両手で首を隠そうとすれば、今度は胸元に顔を埋めてすり寄せてくる。
しかも手はちゃっかりお尻に回されていた。
「んぁ~~~ひんやりしれぇ気持ちぃ~~~~。」
「リクオ様!いいかげんにして下さい!」
「やんあつららぁ最おうらな~~~。うん、ほんお良いおんらぁ。らい好きられぇ。」
「っ!?な、何を言って!?」
「愛しれるう、いぃんらよぉ。ん~~~。」
「ちょ、ちょっと!?リクオ様!?」
突然の愛の告白に、口を付き出して迫ってくるリクオに、酔っていることも手伝って、つららの思考は完全に停止状態になってしまう。
リクオの片手が相変わらず腰のあたりを怪しく蠢いているが、そんな事などまったく気にならなくなっていた。
自分も酔っているのだから、冷気のコントロールが上手く出来ないかもしれない、と気が付いた時には、既にリクオの口でパクリと唇を覆われていた。
・・・たぶん、リクオはキスをしているつもりなのだろう。
つららは慌てて引き離そうとしたのだが、泥酔しているはずのに力強く抱きしめる強さだけは何時も通りで、まるで身動きが取れない。
そのうえ着物を脱がしにかかってきたのだから、つららは本気で焦り始めた。
「ぷはっ!リクオ様!そんなに酔っているのにダメです!」
「あに言いんらつらら。俺あそんらに酔ってないンお。らからぁいお~うら。」
「大丈夫じゃないでしょ!」
「あわれんなっえ」
ジタバタと暴れ始めたつららをリクオはガッシリ押さえて放さない。
つららがもう駄目だと諦めたその時、突然リクオの拘束が緩んだ。
「え?も、もしかして眠ったとか?」
散々暴れ回った挙句に酔い潰れて大人しくなる、そんなはた迷惑な妖を目にした事も一度や二度では無い。
もし被害が自分に及ぶようなら、リクオでなければ手加減無く凍らせるか眠らせれば済むだけの話だ。
だが、考えてみればリクオは起き上がったままだ。
しかもどうやら体を震わせている。
「リクオ様?」
恐る恐る顔を覗き見てみれば、そこには顔を真っ青にしたリクオが、何やら込み上げてくるものを必死に堪えているようだった。
そう、暴れまくったつららに体を小刻みに揺すられ、リクオは抜き差しならない状態に陥ってしまっていたのだ。
「うぷっ・・・・」
「リクオ様待って下さい!まだ駄目です!!キャ~~~~~~!!」
翌朝・・・
つららが咄嗟に用意した氷の桶のおかげで最悪の事態は免れたが、当然最悪の気分になったリクオはそのまま寝込む羽目に陥ってしまい、つららが一晩中付き添って看病していた。
結果として
『3代目が雪女を部屋に連れ込んで襲ったらしい。』
とか
『その雪女はリクオ様の部屋から朝帰りしていた。』
とか
『雪女は甲斐甲斐しくリクオ様のお相手をしたらしい。』
といった噂がしばらく奴良邸を賑わした。
end
見苦しいシーンを書いてしまい、本当に申し訳ありませんでした。
ちなみに噂の発生源は、1つ目と2つ目は目撃者多数によるものですが、3つ目は毛倡妓です。
嘘ではありませんが、他の2つと合わせると別の意味になってしまうから不思議ですね(^^)。
何も無いと焦る二人を見て、きっと皆、初だなぁとニヤニヤ見守っていることでしょう。
本当は4つめの噂として『リクオ様は早ろげふんげふん・・・まだまだ若い。』というの考えたのですが、ここは健全サイトのつもりですので削除しました。
雪女は東北出身→東北は酒豪が多い(実体験)→じゃあつららが酒豪でもいいんじゃないの? という理由からです。
そうそう、つららを酒豪にしたのは
ただ、いくつかの他所様のサイトで見かけた酒に弱いつららの方が、ずっと私の好みなのですけどね~。
酒豪としては既に毛倡妓がいるので、もう十分ではないかと。
それはそれとして、面白そうなネタを思い付いたら、まぁ、自分の好みは二の次といいますか、私にとっては何時もの事です(^^)。