屋上へと逃げるようにして駆け登ったリクオは、息を切らしながらつららの姿を探した。
が、いつも居る場所には何故か見当たらない。
「あれ?・・・どうしたんだろう?」
つららは、日によっては教室に来たり、屋上で待っていたりする。
今日は教室に現れなかったので、リクオはてっきり屋上で待っているとばかり思っていた。
「おかしいなぁ・・・。まぁいいや、待っていればやってくるだろ。」
そう言うとリクオはいつもの場所に腰掛け、つららを待つ事にした。
「それにしても、どうしようかなぁ・・・夜の僕なら、何て言うだろう?」
リクオはホワイトデーのお返しをどうしようか、再び悩み始める。
(ねぇんなら、自分にしてしまえばいいじゃねぇか)
「げっ。よ、夜のボク!?」
リクオの頭の中に、夜のリクオの姿が突然現れる。
心の中の世界では、屋上の柵の向こうが闇夜に替わり、その柵の上に夜のリクオが腰掛けていた。
「妖怪は俺に任せろって言っただろう?つららの事は俺に任せれはいいのさ。」
「冗談言わないでよ。受け取ったのはボクだし、つららはずっとボクと一緒に居てくれたんだ。ボクがお返ししなきゃ。」
「俺がやってもあいつにとっては同じだぜ。それにいい案がねぇんだろ?」
「『お返しに自分』がいい案な訳無いだろ!」
そこまで言って、はたとリクオは気が付く。
「そうか、それもいいかも。」
「おいおい、本気かよ。」
「うん。でも昼間での事だから、君の出番はナシだよ。」
「おい、ちょっと待て!」
夜のリクオが昼のリクオに近付いて手を伸ばそうとするが、太陽の日差しに遮られ、手は届かない。
そのまま夜のリクオの姿が意識の中の世界からフェードアウトし、リクオはハッと現実に返った。
リクオは何となくキョロキョロと辺りの様子を伺い、ふと視線を止める。
「・・・・つらら?」
屋上への出入り口の影から、誰かが覗いている・・・とは言っても、あの少しだけ見えるマフラーの模様を見れば、それがつららである事はリクオには容易に想像がついた。
その人影・・・つららはリクオの呼びかけにびくっと体を震わすと、おずおずと姿を現した。
「なんだ、来てたのなら声掛けてよ。」
「はい、すみません・・・」
つららにいつものような元気が無い事に、リクオは訝しむ。
「どうしたの?元気がないみたいだけど・・・」
「い、いえっ!何でもありません!さあ、どうぞ召し上がってください!」
また牛頭丸あたりに嫌がらせでもされたのかなー、とリクオは思ったものの、とりあえずお腹が空いたので、凍ってはいるが何故か美味い特製弁当をつららから受け取り、昼食を楽しむ事にした。
「どうですか?今日はカニクリームコロッケを作ってみました。」
「ガリッ!ぼりぼり・・・・・うん、美味しいよ。」
カニクリームコロッケというよりは、カニ風味のアイスクリームのような感じがする、とリクオは思う。
そういえばコロッケとなれば高温の油を使うはず。
他の料理にしてもそうだが、自分が高熱を出しただけで触れられないほど熱がっているのに、いったいどうやって調理しているのか不思議でならない。
今度何か理由をこじつけてでも一緒に料理をするよう仕掛けて、謎を解明してみたいなとリクオは思った。
「そうだ、つらら。」
「はい?何でしょうか?」
「今日は放課後に行きたい所があるから、付き合ってよ。」
「ええ、私は護衛なのですから、勿論お伴します。」
何を当たり前の事を言っているんですか、と言わんばかりのつららの顔に、リクオは少し困った顔をして笑う。
「あ、いや、んー。
青田坊には寄り道するって家の方に知らせに帰ってもらって、二人で行きたいんだ。」
「遅くなるのですか?なら知らせた方がいいですね。」
「んー・・・まぁその、そうだというか、ん~~~。」
「??」
歯切れの悪いリクオの言葉に、つららが不思議そうな顔をする。
「とにかく、放課後になったら直ぐだよ。わかった、つらら?」
「はい!」
元気良く返事をするつららにリクオはホッとして食事を再開し、いつものような昼休みを過ごしたのだった。
すみません、アイデアが纏まらず、今回で終わる事ができませんでした。
昼ご飯の前にひと悶着あって、その後イチャつく、という展開を最初は考えていたのですが、途中で話がピタッと止まってしまいましてね。
で、その後がどうしても書けないので、最初からいつものように直感頼りでてきとーに自由に書いてみたら、こうなりました。
次回で流石に終わるとは思いますが、どうなることやら・・・
自分でも何か変な感じになったような気がしますし、あまり期待しないで続きをお待ち下さい。
あ、当サイトではリクオは料理をさせてもらえない、という設定になっております。
最先端機器を取り入れているとは言っても、しきたりなどはなんとなく古いタイプって感じがしましてね。『男は厨房に入るな』って感じじゃないのかなーと。
他所様のサイトで見た、つららの料理の手伝いをするリクオには大変楽しませて頂きましたが、まぁウチはウチということで。