ガタンガタン・・・・ガタンガタン・・・・
列車に揺られながら、リクオはボーっと窓の外の入道雲を眺めていた。
その周囲では清十字団一行が、いつものように賑やかに妖怪話で盛り上がっていた。
今、清十字団は和歌山へと向かっている。
和歌山県西牟婁郡にまつわる牛鬼伝説の話を聞きつけ、懲りもせずに出かけてきたというわけだ。
まさか牛鬼が和歌山にいるわけが無いと、リクオは念のため牛頭丸に聞いてみた所、なんと組員の慰安旅行用の別荘を持っていたらしい。
『まぁ、今回は色々と驚いたけど、これなら安心だよね。』
そう思って快く旅行に参加したのは良いのだが、『せっかくだから』と白浜で海水浴までする事になってしまった。
ただでさえ暑さに弱いつららが、真夏の太陽の下で水着姿になったら、とんでもない事になりかねない。
だが、焦るリクオを他所に、当のつららは海水浴も楽しみだと、皆の前で本当に嬉しそうにはしゃいでいた。
(そういえばあの後・・・)
リクオはふと、帰りがけに浮世絵商店街へ買い物へ出かけた時の事を思い出した。
「へぇ~、及川さん、水着持っていないんだ。」
「ええ、そうなんですよ家長さん。だからどんなのがいいか、選んでもらおうって思っていたんです。」
一見和気あいあいと話しているように見えるのだが、何かこう中に入っていけない雰囲気がある。
つららが水着を持っていない事を呟いた事を、カナが聞きつけ一緒に買い物に行こうという運びになったのだ。
(もう、せっかくリクオ様と二人きりで、買物ができると思っていたのに。)
(どーせ、リクオ君と二人で買物に行こうと思っていたんでしょ。)
とそれぞれの思惑から、先ほどから水面下の戦いが繰り広げられていたのだが、リクオは何か変だと感じはしても、それが何かまでは解らなかった。
そうこうしているうちに商店街へ着き、カナのお勧めの店に案内されるリクオ達一行。
この辺は流石ファッション誌に載るだけはあって、カナは次々と水着を見繕ってはつららに勧め、つららは為されるがまま水着を受け取っていた。
「凄いなぁ・・・あれ?それは渡さないの?」
良く見ると、カナはつららに勧めた水着とは別に、幾つかの水着を自分の脇に重ねて置いていた。
「そりゃあ、私だって新しい水着が欲しいからね。でなきゃ一緒に来たりしないでしょ。」
「それもそっか。」
納得してつららの方を見てみると、カナの勢いに何時も以上に眼をぐるぐるさせているつららが、渡された水着を茫然と眺めていた。
「さ、こんなものでしょ。どう?これっていうの、あった?」
「え?えぇと、ど、どれがいいかな・・・。」
慌ててつららは水着を比べるが、直ぐに選べと言われても、どうにも選ぶ事が出来ない。
カナはそんなつららの様子を見て溜息を付くと、つららの後ろに回って両肩を掴み押し出した。
「え?な、なに?」
「悩んでいるなら、とりあえず着てみれば?」
「へ?」
カナが押した先は試着室。
これから何が行われるか分かったリクオが、ゴキュリと喉を鳴らす。
「ほら、そこに入って。私はこっちを使うから。」
「え?え?」
いまだ事態を正確に飲み込めていないつららが、どうしたものかとリクオの方を見る。
『またリクオ君の方を見て・・・』とカナもつられてリクオの方を見ると・・・
「・・・・リクオ君、何見てるの?」
口を少しばかり開け、メガネをしっかり構えながら自分達を凝視するリクオがそこに居た。
「い、いやこれは別に、その、期待していた訳じゃ!」
「・・・リクオ君。」
「・・・リクオ様。」
ゴゴゴゴゴ
と二人の冷たいオーラがリクオを呑みこむ。
「えーと、ボクは向こうの方へ行ってるね?」
当然。という顔でギロリと睨んでくる二人に、リクオはスゴスゴと後ずさっていった。
「うう、こういうのって、普通はファッションショー宜しく、次々と水着姿を見せてくれるもんじゃないの?」
店の外まで追い出される格好になったリクオが、恨めしそうにそう呟いていた。
お色気系の漫画なら、少年誌だろうが間違い無くそういう展開になっていたのでしょうがね(笑)。
最初は二人きりだったのが、何故かカナが入って、ファッションショーになりかけて、自粛しました。
まぁ、上手く書けなかったというのもあるのですが、申し訳ありません。
魅惑的に水着シーンを描ける人って凄いですよねぇ・・・。
最初はここで終わる予定でしたが、続きます。