「あ…?」
慌ててカレンダーと時計に目をやる。
そう、すでに日は明けた。今日はもう、9月23日。
秋分の日であり、リクオの誕生日だ。
「そ、そうか、もう、オレの誕生日か…!」
何やら気恥ずかしく、頭をかくと、つららは嬉しそうに目を細めた。
「…ふふ。だれよりも先に、一番最初にリクオ様に、お祝いを言いたかったんです。リクオ様がちょうど寝てしまわれたから、どうしようかと思いました。」
クスクスと口元を袖で隠して言うつららに、リクオはなんとも幸せな気分になる。
恋人の膝を枕に、誕生日を迎えられるとは、嬉しいことだ。
「あ…そうか、それで今日はすんなり、酒を用意してたのか…。」
近頃、寝酒が多かったので、時折お小言が混じるようになっていたのだが、何も言わずに部屋に酒を用意してくれたので機嫌が良いなと思っていたのだ。
「リクオ様が、お誕生日を迎える瞬間を一緒に過ごせて、幸せです。」
それを言うのは、こちらの方だと言うのに、彼女はいつも、先に自分は幸せだ、果報者だと笑う。
その笑顔がひどく嬉しくて、リクオはつららの体を抱きしめた。
「…ありがとう、つらら。」
その声に、つららもそっとリクオを抱き返す。
「リクオ様、産まれてきてくださって、ありがとうございます。
皆、リクオ様が居たから、優しいリクオ様だから、幸せです。
…リクオ様、ありがとうございます。」
そういって、つららはもう一度リクオに口付けた。今度はリクオも、つららの体を抱きしめて、口付けを交わす。
「…皆、幸せって言うけどな。オレは、誰よりもお前に幸せだって思っていて欲しいぜ。」
熱い吐息混じりに囁けば、つららの目がひどく潤んだ。
「私は…リクオ様のお側にいられて、ずっと、幸せです。」
「…オレも、お前が居てくれるから、オレで居られる。」
「これからも…」
「ずっと、一緒に居てくれ。」
「はい。」
二人は微笑みを交わし、堅く抱き合う。
何度でも、何度でも。
あなたがこの世に産まれたときから。
初めてあなたに出会えた日から。
あなたが側にいて、あなたと共にに笑える事が、何よりも幸せで、誇らしい。
あなたの生まれた日を祝い、 あなたと出会えた日を祝い、 あなたと居られる事を祝い、 あなたが今、自分が生きているこの世に、生まれてきてくれたことに感謝しよう。 お誕生日、おめでとう
だから、未来永劫、これからもずっと、何度でも。