3時間目が終わると同時に、真相を聞き出そうとするクラスメイトにリクオが囲まれる前に、ゆらがさっと手を取り屋上へと連れ去っていった。
取り残された形になったカナは、ブーイングの声を上げるクラスメイト達と共に?マークを浮かべるばかりである。
「はあ・・はあ・・よし、誰もついてきとらんな。」
「ふう、助かったぜ、ゆら。ありがとな。」
誰も付いて来ていなさそうな事を確認してから、リクオはゆらに礼を述べる。
念のために倉田に見張りをさせると、氷麗がいるはずの場所へと歩いていった。
「あれ?リクオ様、まだお昼御飯の時間ではありませんよ~。
・・・げっ、陰陽師娘、なんでここに。」
「なんでもへったくれもあらんやろ。どういうことか、説明してもらおうか。」
ゆらなら別に隠す事でも無い・・いや、むしろバラして巻き込んだ方が得策だと、リクオと氷麗は事の次第を全てゆらに話す事にした。
・・・
・・
・
「・・・そう言うことなら、協力したるわ。奴良くんが元に戻らんかったら大事やし。」
「俺も『奴良くん』だろ?」
ニヤリと笑いながら顔を近付けてくるリクオだったが、ゆらは動じることもなく、変なものを見るような目でじっとリクオを睨み返す。
「ぬかせ、妖怪。」
「今は人間だぜ。」
「ほう・・・」
そう言うとゆらりと黒いオーラを発しながら、財布から幾つかのお札をだした。
「ならこいつを使っても問題ないはずやな?
運が良けりゃ、あんたが消えて奴良くんが元に戻るかも知れんで。」
「ちょ・・・」
「ちょっと、リクオ様に何しようとしているのよ。」
焦るリクオを庇うように氷麗が間に割って入る。
氷麗の方が確実にお札の影響を受けるはずなのだが・・・
「治療や、治療。まぁ、もしかしたら夜の方は消えるかもしれんけどな。私らには好都合や。」
「やれるものならやってみなさいよ。その前にその紙切れもあなたも氷漬けになるわよ?」
ゴゴゴゴゴ・・・と激しく睨みあう二人を、やれやれとリクオが苦笑いしながら眺める。
このまま眺めるのも面白いが、本当にやり合うことになると厄介だ。
そう思ったリクオは、自分を庇うようにして立っている氷麗に、左腕を肩から、右腕を腹から回して、寄りかかるように抱きついた。
「リクオ様!?」
驚く氷麗の肩に自分の顎をのせ、耳に息を吹きかけるように囁く。
「落ち着けよ、そいつが言ってんのは冗談に決まっているだろ?」
自分にかかるリクオの体重に、密着するリクオの体の感触に、そして耳にかかるリクオの息吹に、氷麗は顔を真っ赤にさせ硬直する。
「おい、人前でどこ触っとるんや、この色魔!」
「は?」
ゆらもまた顔を赤くさせながら、慌てた様子でリクオの左手を指差している。
その左手といえば、氷麗の肩からぶら下がるように前に垂れており・・・丁度ゆらから見ると、氷麗の胸を触っているかのような位置にあった。
「・・・まだ触ってねぇぞ?」
その言葉にハッとなった氷麗が、慌てて両手で自分の胸を隠した。
「リクオ様!学校でこのような事はお止めになって下さい!」
「なら帰ってからならいいのか?」
「そ、それは・・・」
「こっちを無視すんなや。」
ゴスっといつのまにか回り込んだゆらが、リクオの横腹に蹴りを入れる。
「あ痛てててて・・・」
「ホッ・・じゃなくて、リクオ様に何てことするのよ!」
「奴良くんらしからぬ事をしようとしたんを、防いだったんや。感謝しい。」
氷麗はキッとゆらを睨みつけたものの、そう言われては返す言葉もない。
実際の所、助かったという思いがあったのも事実だ。
「さ、もう授業が始まるし。
とりあえず休み時間は、可能な限り教室におらん事やな。」
「そうね、それが宜しいかと思います、リクオ様。」
「しょうがねぇな、分かったよ。」
リクオはしぶしぶ頷き、リクオとゆらの二人は教室へと戻っていった。
屋上で抱きつくシーンなのですが、この抱きつき方だと、昼のリクオの身長じゃキツイはずなんですよね。
水面下では、つま先立ちでフルフル震えながら頑張っているに違いない、とその描写も入れようかと思ったのですが、雰囲気が完全に壊れるので止めておきました(笑)。
そういえば、時期は特に考えていませんでしたね。
リクオとつららの正体がばれた後なのは間違いないとして、京都編の前か後かとなると、どちらでもいけそうですね。
まぁ、あまり気にせずに作っていきたいと思いますので、あまり気にせずにお楽しみいただければと思います(^^)。