その後、つらら組を結成した氷麗は元気を取り戻し、荒鷲組の面々もまたそんな氷麗に感心するようになってきていた。
だが、それを邪魔するかのように瀬戸物の妖が暴れ出し、人々を襲い始めた事にリクオは思わず飛び出そうとした。
が、それもまた青田坊によって引き止められてしまう。
「ちょ、青田坊、何でだよ!氷麗が危ないんだぞ!守らなきゃ!」
『ちょっと青田坊、何考えてんのよ!リクオ様が危ないのよ!守らなきゃ!』
以前聞いた言葉を思い出し、青田坊は苦笑しながら、あの時と同じように今回はリクオを説得する。
「リクオ様。確かにあっしらは護衛ですが、なんでも守ればいいってもんじゃあないんです。
この程度の相手なら、きっと雪女一人で大丈夫ですよ。
そういうのを見極めて、必要な時だけ守るのも、護衛の務めってもんでさ。」
「でも・・・」
なおもリクオが食い下がろうとした時
「危ないおじいちゃん!!」
氷麗が自分の体を張っておじいさんを庇った姿を見た途端、リクオの動きがゆっくりと止まる。
そして氷麗のそんな姿勢に呼応したかのように、荒鷲組もまた戦いに参加していったのだった。
(そうだ、今まで何を見ていたんだ、ボクは)
リクオはさっきの青田坊の言葉をもう一度思い起こし、そして自分が早とちりしていた事が恥ずかしくなってきた。
きっとつららも同じなんだろう。 そして今ではこうして、必死に人を守ろうとしている。 「さて、それじゃあ帰る準備をしておこうか。」 「はい、リクオ様。」 ああ、でもその前に牛頭丸にこれ以上付きまとわないよう、釘を刺しておかないと。 すっかり日も落ち、雪がシンシンと振り続けている。 「おい、青田坊。お前は周辺の様子を見てきな。」 「は?リクオ様、ここはもう奴良組のシマの中心部です。 何を言っているのかと訝しむ青田坊に、リクオは「気の気かねぇ奴だな」と呟きながら青田坊を睨む。 「いいから周辺の様子を見て、そのまま屋敷に帰るんだ。いいな、青田坊。」 「はあ・・・3代目がそうおっしゃるなら。」 未だに何故このような事をと不思議がる青田坊であったが、3代目の命令とあらばと、そのままリクオと別れ去っていった。 「危ないぜ、夜道に一人は。」 「リクオ様・・・・!?」 振り向いた氷麗に、すっと傘を差しだし、リクオは今日の事を振り返りながら氷麗をじっと見つめる。 「あ・・れ、む、迎えに・・・?」 「いーから。 「は・・・はいッ!」 「そうかい。」 全部知っているけどな。 「帰るか。」 「はい!」 こういう風に、夜道を一つ同じ傘の下で歩くってもの、いいもんだな。 136幕のラストシーンを見て悶えまくって思い付いた作品です。いかがでしたでしようか? 思った以上に似たもの夫婦を書くことが出来て、非常に満足できました(^^)。 もう去年の本誌でのリクつらっぷりには悶えさせられてばかりでしたが、今年も悶えさせられ続けさせてほしいな~、と切に願っております(^^)。 この話には、オマケがあります。
入学式のとき、ボクはまだ妖怪を軽視していた。
今はもちろん違う。人と同じように、妖も大切だと気付いたから。
入学式のときは、ボクが一方的に思っていたように、つららもまた妖としてはあたり前の、人間を軽視する妖だったんだろう。
でも、ボクが変わって、言葉と行動で自分の思いを現すようになって、そんなボクにつららは盃を求めた。
ボクの言葉をしっかりと受け止めてくれてたからじゃないか。
リクオはそう考えると、嬉しくなってきた。
いつの間にか氷麗の大勝利で戦いも終わり、荒鷲組との仲も随分良くなったように見える。
リクオは遠く離れた木の上にいた牛頭丸達を見つけると、妖しくニヤリと口元を歪ませた。
その中、リクオは青田坊を先にやって持ってきてもらっていた傘を差し、相変わらず氷麗の後を付けていた。
そんな事しなくても大丈夫ですよ。」
上手くいったかい?荒鷲一家とは。」
そうリクオは思いながら、氷麗が頑張っていた事、そして人を守ってくれた事を、誇らしく思っていた。
そうリクオは思いながら、氷麗が嬉しそうに今日の事を喋っているのを、時折相槌を打ちながらずっと聞いていた。
後書き
他所様のサイトでもこの幕を元にした作品を見かけたのですが、違う方向性に持って行けて良かったと思っています(^^)。
ああ、でももしかしたら、私のまだ知らないサイトで、似たような話があるかもしれませんけどね。
もし見かけられたら、ぜひ教えて下さい。その素敵サイトの小説をぜひ読みたいです(笑)。
本誌で後ろからリクオが現れた時は、もう『ストーカーしたよね?してたんだよね?』としか思えませんでしたし(笑)。
作り終えた後に何となく思い付いてしまった小話なので、オマケってことで。
リクオも氷麗も出てきませんが、それでも宜しければ、『オマケ』よりご覧下さい。