入学手続きの翌日。
リクオが自分(とつらら)の部屋で、いつの間にか床に敷かれていたこの部屋には不自然極まりない畳の上で寛いでいると、突然勢いよく扉が開きつららが飛び込んで来た。
その腕にはペンギンらしき動物を抱えており、つららは興奮した顔でリクオの側へと座り込んだ。
「リクオ様、これ見て下さい!この学園では生徒一人一人がペットを飼う事が出来るそうですよ!」
「ああ、そうみたいだね。ふーん、つららはそのペットにしたんだ。
なんだかつらららしくて、似合っているよ。」
「ありがとうございます!ほんとこの子、可愛いんですよ~~。」
嬉しそうにペンギンもどきを抱きかかえて頬をすり寄せる姿は微笑ましいのだが、リクオはなんとなく面白くないと感じてしまい、つららからペンギンもどきを奪うように抱き上げた。
「ふーん、見た目よりも軽いな。そういえばつららも・・・」
「あ、ダメですよリクオ様。女の子をそんな乱暴に掴んじゃ。」
「・・・女の子?」
え?このペットに性別あったっけ?とリクオは不思議そうな顔をしてつららを見る。
「はい。『お涼』って名前を付けたんです。可愛らしい名前でしょう、リクオ様。」
「うん、そうだねつらら。あ、そうだ、こっちにペット小屋を置いたんだけど、どうかな。」
リクオはにっこり笑ってつららにお涼を返すと、ペットの為にとリクオが部屋の隅に用意しておいたペット小屋へと向かう。
その後に従ってつららとお涼が小屋の前まで歩いて行くと、そこから小さな羽根の生えた、羊らしき動物が姿を現した。
もっとも、その大きさは羊というにはあまりにも小さいが。
「ほら、ボクはもうこのペットに決めたんだ。」
「わぁ~~~、可愛いですね!何て名前なんですか?」
つららは自分のペットを抱きかかえながら、目を輝かせてリクオのペットを見つめる。
「『カナ』って名前にしたんだ。ボクは『カナちゃん』って呼んでるから、つららもそう呼んで。」
ミシッ
「ピギャーーー!!」
「つ、つらら!何やってんのさ!お涼が苦しんでいるよ!」
つららに力いっぱい抱きしめられたお涼の寸胴の体格が、まるで瓢箪のようにひしゃげている。
リクオの言葉にハッとしたつららが、慌ててリクオに向けて頭を下げた。
「も、申し訳ありませんリクオ様。」
「いや、ボクはいいんだけど・・・お涼が。」
「キャーーー!お涼、大丈夫!?」
力を緩めたつららの腕の中では、お涼がぐったりと体を曲げ口から泡を吹いていた。