学園にもようやく馴染み、いよいよ冒険を始める時が迫っていた。
そこで一緒に冒険してくれる仲間を探す為、リクオは何人ものクラスメイトに声をかけていたのだが、なぜか尽く失敗していた。
クラスでは既に『人の良い奴』で通るぐらいになっているのに、仲間にならないかと声をかけると、何故か視線をそらして言葉を濁し、そして断わってくるのだ。
「うーん、つらら。なんだか自信無くしそうだよ。」
「大丈夫です、リクオ様ならきっと素敵な仲間が見つかりますよ。」
「そうそう、いざとなったらオイラた・・・オイラが一緒に冒険しますから。」
「うん!よし、頑張ろう!」
河童の言葉にビクンと背筋を伸ばしたリクオは、大きな声をあげると勢いよく駆けだしていった。
「なんだか傷付くなぁ・・・。」
「しょうがないじゃない。
あなたの事はもう諦めたって感じだけど、これ以上増えちゃ本当に屋敷にいた時と一緒になっちゃうから。」
まぁそうなんだけどね~、と河童が両手を頭の後ろに組んでのほほんと答えると、ぬっと大きな影が河童を覆った。
「河童!なぜお主なんじゃ~~~~!!
ワシが最初にリクオ様の前に姿を現しておれば、リクオ様とご一緒する事が出来たというのに!!」
河童に覆いかぶさってきたこの大男の名は青田坊と言う。
つららや河童と同じく、奴良家に仕えているバハムーンの一族で、その巨体と怪力を生かした格闘家として名を馳せていた(注:ゲーム内では同じ1レベルです)。
が、目から涙を恥かしげもなく流し情けない声を出すその姿からは、とても彼が強者であるようには見えない。
「うるさいわよ青。リクオ様に気付かれたらどうするのよ。」
「そうそう、まだ一応ばれていないことになっているんだからさ。
だいたい無事着いたって安心して、お酒飲みすぎて潰れていたのって青田坊じゃなかった?」
そう、リクオ達がこの学園についたあの日、青田坊は親友の黒田坊・・・彼もまた奴良組に仕えている・・・と共に『もしかしたら学園ではお酒が飲めないかもしれない』と徹夜で飲み明かしたのだった。
リクオに黙ってちゃっかり入学手続きをしたその日のうちに、というのはどうかと思うのだが。
「う・・・あれは黒田坊のやつが・・・」
「さあさあ、リクオ様の後追いかけなきゃいけないんだから、邪魔しないで。」
「うぉおおお~~~!リクオ様~~~~~!!」
遠くから何処かで聞いたことがあるような雄叫びが聞こえてきたのだが、リクオは気のせいだと自分に言い聞かせてクラスメイトに声をかけた。
「ねぇ、君ってたしかまだパーティー組んでいなかったよね?
どう?ボクと組んでみない?」
「え、ぬ、奴良?えーと、一応聞くけど、他に誰がいる?」
前にも同じように似たような質問をされていた事に、リクオは不安を覚える。
もしかして、彼もまた断わってくるのではないだろうかと。
「んーと、今のところ、つららだけだけど・・・。」
「や、やっぱり・・・ちくしょう!上手くやりやがって!噂は本当だったんだな!」
「え?え?」
「だれがお前と何か組むもんか!うわーーーーーー!!」
男子生徒が涙目になって走り去るのを、リクオはポカーンと見送る事しか出来なかった。
戻る その2